8ミリフィルム

「ねぇ、8ミリフィルムの映写機ってどこにあったっけ?」
 久那結城(くな ゆうき)が映研部部室を覗いて訊いた時、そこにいたのは俺――明河志筑(あきかわ しづき)と以外に羽鴇(うとき)と和泉(いずみ)の3人だけだった。
その時、彼女の方を向いているのは俺と羽鴇だけ。和泉の野郎はその方向に向こうともしない。
「若野(わかの)先生が知っているんじゃないの? 結城」
 羽鴇が久那に言えば、彼女は困った顔をして
「先生が『部室の方に移動させた』だってさ」
「あー、もしかしてこれか?」
 和泉が顔を上げて指差した。そこには、見慣れた8ミリフィルムの映写機が鎮座している。
「何であんたがつついているのよ、交喙(いすか)」
 羽鴇が和泉に訊くと
「若ちゃん命令で、直せって」
 俺って手先が器用だから、と和泉がわざとカッコつけて答えた。
 ちなみに、若ちゃんとは我らが映研部顧問・若野聡美(さとみ)先生のニックネームである。
 久那は映写機の居場所がわかって安心したらしく、俺のほうを向いて
「志筑、視聴覚室に来いって。若野先生が」
 と、言い出した。
「何で俺が」
「若野先生が『明河を視聴覚室まで連れて来い』って」
 多分会場作りの手伝いでしょ、と付け加えて。
「…別にかまわないけどよ、羽鴇は」
「陸葉(りくは)は、和泉君のお守りだって。若野先生命令」
「…別にかまわないけど」
 羽鴇が一瞬だけ和泉の方を向いて答えた。
「本当は彼氏といる時間の確保だろ」
 羽鴇からの殺気を感じながら、久那と共に部室を出た。



***** ***** ***** *****



 視聴覚室までの道は、久那と一緒なのか会話が全くない。と言うか、気まずい。やがて、彼女が俺の方を向いて尋ねた。
「あのね、この間ロッカーの中に手紙が入っていたんだけど…あれって、志筑が書いたの?」
「…うん」
「…内容さ…あれ、本当?」
「ああ」

 1週間前。
 俺は久那のロッカーにある手紙を入れた。まぁ、簡単に言うと…ラブレターだ。
 俺の14年間という短い人生で、いい加減な気持ちじゃなくてまじめに書いた手紙はこれが初めてだろう。久那とは、映研に入部した時からの知り合い。羽鴇と和泉も入部した時点で知り合った。
 部活で一緒に行動するうちに、俺は段々心の中で妙な気持ちが育っていくのを感じた。特に、久那と行動を共にするとそれが育っていく。それが、『恋』だと言う事に気づくのは1ヶ月も前だった。
 それから俺は、文房具店に走って封筒と便箋(びんせん)を買った。
 机の上でああでもない、こうでもないと考えに考えた。
 後日、やっと手紙を完成して、久那のロッカーに放り込んだ。直接彼女に渡すのは照れくさかったし、携帯のメールは何か手軽すぎるが、俺は携帯自体を持っていない。親が持たせてくれないからだ。

 己の手紙の内容を思い出して撃沈状態の俺に、久那は続ける。
「手紙、ありがとう。嬉しかった」
「…内容、文法とかメチャクチャで支離滅裂だっただろ」
「ううん、志筑が私をどんなに思っているのかが伝わっていて…とっても嬉しかった」
 久那は俺のほうを向いて
「私も、志筑の事…好きです」
「…サンキュな。俺もだ」
 多分、俺と久那の周囲には花とか…そんな甘い空気が漂っている事だろう。

Fin.

後書き(と言う名の言い訳)
 ええっと、初めての恋愛小説でした。…中学生って、こんな甘い恋しませんよね? 何か書いている自分が恥ずかしいです。
 ちなみに、陸葉と交喙は『図書館』に出ていたキャラです。個人的にこの二人は好きなので、再演と言うか…ゲストで出てもらいました。
 まさか、1年も満たない内に1000hit…。未だに信じられません。これからも精進していきますので、よろしくお願いします。

2月23日まで配布中です。『お持ち帰りしました』等の報告はご自由にどうぞ。
現在は配布しておりませんので、勝手に持って帰らないでください!!!



雲峯水零