サイト内にある『ミックス 100のお題』より
88・コーヒー(Web Clap Log ver.)

 ベルガモット国軍総本部。その、最上階の一室。

 対になっている高級な黒革のドアに近い場所に座っている留衣(るい)は、目の前の白い陶器のカップに注がれた黒い液体を目の前にして固まっていた。

 彼女の横でリンゴをかじっていた(かえで)が、隣の人物のいつもとは違う行動に目を丸くすると訊いた。

「飲まないのか?」

「…飲むに決まっているじゃん」

「だったら、早くしろよ」

 二人ともベルガモット国軍の軍服に見を包んでいるが、ジャケットとズボンの色は黒、ネクタイの色は赤だ。

「留衣。飲めよ、コーヒー」

「分かっている」

 留衣は、いらだち混じりに楓に言うと、カップの取っ手を持ってコーヒーを一口飲んだ。すると、彼女は無意識に眉間に皺を寄せてカップを同じ色のソーサーに置いた。

「やっぱり苦い。…コーヒーなんて嫌いだ〜」

 本当はホットミルクが良かったのに、とブツブツ言いながら隣でリンゴをかじっている楓をにらみつけた。

 ――あんたがリンさんに『こいつはブラックコーヒーで』って言わなければ…こんな事にならなかったのに。

 留衣は任務についての詳細をまとめた書類と共にリンが部屋に入って来るまで、ずっと楓をにらみつけていた。



Fin?

オマケ

「留衣、お前ってコーヒーダメだったんだ」

「そうなんですよ。コーヒーって、砂糖と牛乳を入れておかないと飲めなくって。…本当はあたし、ホットミルクをお願いしたかったんですけど…楓の奴が勝手に頼んだんです」

「お前が悩んでいたから適当に頼んだんだ。感謝して欲しいぐらいだね」

「ふ〜ん、そうなんだ」

「留衣、何で僕の脇腹に銃口を構えているんだ? ゴ、ゴメン、僕が悪かった」

「悪いと思っていたら、この後あたしの買い物に付き合って。問答無用だからね」

「…はい」

 ――結局銃口構えられるハメになんだから、最初からやんなきゃいーのによ、楓。



Fin.